今年はホタルを見られましたか?

初夏の夜に神秘的な光を見せてくれるこの昆虫は、謎に包まれた不思議な存在です。

彼らがなぜ光るのか?どうやって光っているのか?どのようにして光る能力を手に入れたのか?
興味がわいてきませんか?

今回はこの不思議な光る昆虫について調べ、考えたことをまとめてみました。

ホタルとは

ホタルは甲虫目のホタル科に属しています。
ホタルといえば、光る虫。発光しながら飛ぶ姿を思い浮かべる方が多いと思いますが、実は世界に存在するホタルの多くは成虫になると光らないタイプの、ダークファイヤーフライと呼ばれる非発光性ホタルです。

現在、地球には2000種ものホタルが存在していて、中でも熱帯地方には多くの種類のホタルが生息しています。

日本に生息しているのは50種で、馴染み深いのはゲンジボタルとヘイケボタルですが、彼らのように幼虫が水中で生活するホタルは世界的にみるととても珍しいことなんです。
世界の2000種のホタルたちのほぼ全てが、水辺とは関係のない場所で生息している陸生ホタルです。

ホタルは、その求愛行動によって3つのタイプに分けられます。

  • ライトニングバグ(点滅型ホタル)
    成虫が求愛するときに光を明滅させるタイプのホタルです。ゲンジボタルとヘイケボタルもこのタイプ。
  • グローワーム(無翅型ホタル)
    メスは翅を持たず飛ぶことができませんが、オスを惹きつけるために発光します。
  • ダークファイヤーフライ(非発光性ホタル)
    成虫は発光せず、化学物質(香り)を使って求愛します。

このようにさまざまなタイプがあるホタルですが、幼虫の間は全て発光します。

なんのために光るの?

ホタルが光る理由は2つあると考えられています。

理由その1

求愛。結婚相手を探すため。
ライトニングバグタイプのゲンジボタルとヘイケボタルの場合、オスが結婚相手を探して光ると、そのオスに惹きつけられたメスが光って返事を返します。
まるでラブレターですね。ホタルの光はオスとメスの愛の交信なのです。

光の明滅の間隔や速さはホタルの種類によって違っていて、たくさんのオスがリズムを合わせて一斉に明滅するものもいます。

理由その2

「私は食べても美味しくありません!」という警告を発している。
ホタルは、卵も幼虫もさなぎも光ります。
結婚する時期にない卵や幼虫やさなぎが光るのは、身を守るためなのです。

実は、ホタルはすご〜くまずい味がするのだそうです。食べてみた人によると、苦くて臭いのだとか。
例えば、他の生き物が光るホタルの幼虫を食べたときに、この変な味にオエ〜ッとなったとします。
すると、その生物は「あのピカピカ光るやつはまずかった」と記憶し、次からは食べようとしなくなるというわけです。

どうやって光っているの?

ホタルの発光は、化学反応によるものです。
異なる2つの物質が混ざり合うことで、化学反応を起こして発光します。

その2つの物質とは、
ルシフェリンとルシフェラーゼと呼ばれる物質です。
ルシフェリンは、化学反応で酸素とくっついて光を出す物質で、ルシフェラーゼはルシフェリンが酸素とくっつくのを手助けするタンパク質(酵素の一種)です。

ルシフェリンとルシフェラーゼは、発光生物によって違っていて、ホタルの場合ルシフェラーゼはもともと脂肪を燃やす働きのタンパク質だったことが、日本の研究グループによって明らかになっています。

ホタルのルシフェリンは、ホタルの種にかかわらず共通の物質であることがわかっていますが、どうやってルシフェリンをつくりだしているのかということは未だ謎で、研究が進められています。

ホタルの光は熱くない

人間が作った蛍光灯の光は、発光すると熱が発生します。
これは、電気エネルギーのうち熱になってしまう割合が90%もあるから。
エネルギーのうちの10%しか光になっていないのです。

ホタルの光は化学反応によるエネルギーのうち、熱になってしまう割合が少なく、20〜50%は光になります。
すごく効率の良い光なんですね。

どうやって光る能力を手に入れたの?

現在、世界に生息しているホタルには共通点が多く、遺伝子をたどっていけば共通の祖先に行き当たります。
原始のホタルが生きていたのは約1億5000万年前で、恐竜が繁栄していたジュラ紀でした。
ホタルは2600万年前には、現在私たちが見ている姿とほとんど変わらない姿形をしていたことがわかっています。

ホタルのルシフェラーゼはもともと脂肪を燃やす働きを持つタンパク質だったことが遺伝子を調べることによりわかったのですが、このタンパク質に何らかの変化が起こったことで、ホタルは光る能力を持つ生き物に進化していったと考えられています。

ホタルを取り巻く厳しい環境

人間社会の発展によりホタルの生息できる環境は破壊され、その数は確実に減り続けています。
具体的に私たち人間の営みの何が、彼らを脅かしているのでしょうか?

住処となる自然環境の減少

ホタルは人の手で荒らされていない自然環境を好んで生息しています。ゲンジボタルやヘイケボタルの場合は川や田んぼ、その他のホタルの場合でも湿地や草原、森、小川の岸などです。

ホタルは卵、幼虫、成虫とどの段階でも常に水分を必要とし、乾燥には耐えることができません。
メスは苔の上などの湿度の高い場所に卵を産みつけ、孵化した幼虫は土の中に住むものが多いです。(ゲンジボタルやヘイケボタルの場合、幼虫は水の中でカワニナなどの貝類を食べて成長します。)
幼虫時代の活動範囲は狭く、遠くまでは移動しません。
成虫になり、飛ぶことができるようになっても遠くへ移動することはなく、限定された狭い範囲で一生を終えるのです。

こうした生態を持つホタルたちは、条件さえ整っていれば何年も同じ場所に存在できる反面、条件が悪くなってもその場から出ていくことができません。宅地造成などの建設作業や景観整備のために、土壌を取り除いたり入れ替えたりすれば、生息できなくなってしまうのです。

農薬や合成洗剤による水の汚染

さらに、農薬や合成洗剤といった化学薬品も彼らの生命に影響を与えます。

2008年の韓国での研究で、一般的な殺虫剤がヘイケボタルに害を与えるかどうかが検証され、ほぼ全ての農薬が製造者の推奨濃度で使用すると強い毒性を示しました。
ホタルの卵、幼虫、成虫は100%死滅してしまったのです。

化学薬品は殺す相手を選べないので、ホタルの餌となる生物も容赦無く全滅させてしまいます。

商売のための乱獲

かつてホタルが流行り、生きたホタルに高い値段がつけられていたことがありました。
ホタル捕り職人が一夜で何千匹ものホタルを捕まえ、カゴに入れて都会に販売したのです。
この時、乱獲されたホタルたちの中には卵を抱えたメスも含まれていました。
彼らは放たれた場所には適応できず、子孫を残すことができないまま、故郷から遠く離れた土地で死んでいくしかありませんでした。

求愛行動を妨げる光害

人間は科学の発展により、人工的な光を手に入れました。
おかげで夜間でも道路は明るく、駐車場や建物周辺の安全性も良くなりました。

しかし、一方で光害という問題も引き起こしています。
人工的な光は時に、目的とは異なる場所までも明るく照らし出します。
夜の闇が侵されることで、ホタルの求愛信号である光も届かなくなり、繁殖が妨げたれてしまうのです。

小さな昆虫の光が消えても、生命全体から見れば大した問題ではないのかもしれません。
しかし、ホタルたちのラブレターが届かない世界なんて…虚しすぎると思いませんか?

ホタルの光よ消えないで!
日本のホタル復活運動

「ホタルを失ってはならない!」

ホタルの個体数の減少に気づいた日本のあちこちで、ホタルの生息環境を復活させようという活動が行われるようになりました。
日本人のホタル愛に火がついたのです。

多くの地域や自治体が河川の浄化に取り組み、下水処理施設が建設され、産業排水や農業排水を規制する条例が制定されました。
川岸の周辺も、ホタルたちが生息しやすいように設計し直され、ホタルが生息する川は保護されるようになりました。
ホタルを卵から飼育し繁殖させることにも成功し、繁殖させたホタルの幼虫を河川に戻すことも行われました。

こういった活動は、年齢を問わず地域のさまざまな人の心を一つにし、見事な成功を収めています。
かつてに比べれば数は減少していますが、これらの活動により復活したホタルたちは日本各地で愛され、「ホタルまつり」などの催しが開催されるようになりました。

ホタルの復活は、環境保護の努力の賜物であり、「ホタルまつり」はその成功を讃える象徴として多くの人を魅了し、地域経済にも大きく貢献しているのです。

ホタルが語る愛

ホタルの光について調べてみて、あらためてその不思議さに驚いたのですが、私はこの「2つの物質を混ぜ合わせることにより光る」ということに、すごく心惹かれました。

エネルギーの融合という愛の本質を、彼らの光は私たちに語りかけてくれているのではないか…そんなふうに感じたからです。

社会意識という限定された狭い思考の中で生きている私たちは、良い悪い、損得などの価値判断に反するものを嫌い、裁き、受け入れないことが当然のようになってしまっています。

このような価値判断は、本当は自分の考えなどではなく、周囲で言われていることやテレビで見た情報を鵜呑みにしただけのものであることに、多くの人は気づいていません。
無意識のうちに、つくられた自己という偽物の自分を生きているようなものです。

本当の自己を生きるとは、価値判断により裁き続けた自らの全てを取り戻し、愛そのものに還っていくこと。
生存本能による恐怖を超えて、他の在り方を受け入れる時、
意識の拡大とともに広がる世界こそ、本当の自己として見る真実の宇宙です。

人間は、ホタルの光を見続けられる世界を、その愛の復活により存続させていかねばなりません。
それが、地球全生命のリーダーとしての私たちの役割ではないでしょうか。

田んぼは環境浄化と町おこしの力を秘めている