与謝野町のシンボルにもなっている椿。
中でも、樹齢1000年をこえるとされる巨木、『滝の千年椿』は町の人たちから愛され、大切にされている神秘の黒椿です。
樹高約10m、幹回り約3、3m、枝張り南北に14m、東西に13m にも及ぶ巨木で、その大きさは、椿のイメージをはるかに超えるほどの迫力です。
満開時の壮麗な姿は、前に立つだけで神秘的なエネルギーに圧倒されてしまいます。
千年椿は、江戸時代以降に改良の進んだ園芸品種ではなく、原種のヤブツバキで、椿研究家の渡邊武博士の調査により、ツバキ科ツバキ属クロツバキでは国内最長寿級の古木であるとして、平成元年に京都府指定文化財となりました。
毎年、開花時期にはツバキ祭りが開催されるのですが、今年はコロナの影響で開催されませんでした。
でも、せっかくの開花。
久しぶりに千年椿に会いに行きたくなり、行ってきました。
滝の千年ツバキ公園
京都府与謝郡与謝野町字滝小字深山316
<アクセス>
(公共交通機関)
京都丹後鉄道「与謝野駅」下車、タクシーで約12km。
(自動車)
1、京都縦貫自動車道路〜鳥取豊岡宮津自動車道路〜「与謝天橋立IC」より国道176号(道の駅「よさの野菜の駅」から約4km。)
2、舞鶴若狭自動車道「福知山IC」より国道9号〜国道175〜国道176号(道の駅「よさの野菜の駅」から約4km。)
加悦椿文化資料館から滝の千年ツバキ公園までは約1、5km。
千年ツバキ公園から千年椿まで、徒歩約5分。
※ 加悦椿文化資料館から千年椿までの道は、雪の多い1月から2月には通れなくなりますので、ご注意下さい。
※詳しい開花状況を知りたい方は、与謝野町役場社会教育課(0772−43−9026)にお問合せ下さい。
加悦文化資料館から千年ツバキ公園までの道のり
加悦文化資料館から千年ツバキ公園までは、細い山道です。
私は徒歩で登ったことがあります。
桜や野草、川のせせらぎなど、楽しみの多い道ですが上り坂が続きます。
雪の多い1月から2月頃は通れないのですが、その他の時期は車で通行できますので、山道はちょっと…いう方は公園まで車で行かれる方がいいと思います。
加悦椿文化資料館の前の道を少し上がったところに、門があります。
雪による通行止めの時以外は開けられるようになっていますので、通行したい場合は一旦車を降りて門を開けて通ります。
(ここで門が閉まっているから通行できないのかな…と迷われる方が結構いらっしゃるようです。)
道は車1台通るのがやっとの狭い道ですが、ところどころに対向できる場所もあります。
滝の千年ツバキ公園に着くと、駐車スペースがありますので、そこに車を停めて歩きます。
そこからは、小川に沿って約180m程の上り坂です。
森を感じながら歩く
車を降りると、涼やかな澄んだ空気に包まれて深呼吸したくなりました。
上り坂ですが、小さな川のせせらぎや、木々を通り抜ける風の匂い、苔の感触、鳥の声など、森を感じながら歩くのはとても気持ちがいいです。
神秘の黒椿が姿を現す
山道を登っていくと、少しずつ見えてくる巨木。
呼吸をととのえながらその前に立つと、力強く神秘的なその姿に、言葉を失ったまま見惚れてしまいます。
花はやや小ぶりの一重で、わずかに艶のあるビロードのような花びらは、赤というより紫がかった深紅色をしています。
この花の色こそ、黒椿の名のゆえんだそう。
(千年椿は根などの保護のため、立ち入り制限があって近づくことができなかったので、花のアップ写真は別の椿です。左は日本のツバキ園のヤブツバキ、右は千年ツバキ公園内のヤブツバキです。)
千年椿は今年は花数が少ないそうですが、それでも十分楽しむことができました。
日本のツバキ園で様々な椿の品種を愛でる
加悦椿文化資料館の横には、全国49市町村から寄贈された49株の椿と、与謝野町の「滝のツバキ2世」を合わせた50株が植えられています。
椿ってこんなにたくさんの品種があるんですね。
どれも違った魅力があって、うっとりしながら見させてもらいました。
間近で花を見られるので、写真を撮ったりじっくり観察したり、スケッチも楽しめます。
加悦椿文化資料館
加悦椿文化資料館にもお邪魔しました。
銀色の建物が資料館です。
そのユニークな外観は千年ツバキの里のシンボルとして、椿の花弁の形を模して建てられたそうです。
加悦椿文化資料館
- 開館時間 9:00〜17:00
- 休館日 3〜5月:毎週月曜日(祝日の場合は翌日)
6〜11月:毎週月・火・水曜日
12〜2月:休館 - 入館料 一般200円
小・中学生100円
団体(8名以上)一般150円
小・中学生50円 - 駐車場 無料
椿とともにあった人々の暮らしに思いを馳せる
加悦椿文化資料館の展示物や、千年ツバキ公園内の立て看板から、千年椿にまつわる歴史を知りました。
以下に紹介させていただきます。
千年椿の付近にはかつて、大田和(おおたわ)という小さな集落があり、人々の暮らしがありました。 現在、大田和に至る谷筋は植林に覆われていますが、この一帯はもともと開墾された棚田で、水田耕作が盛んに行われていました。 千年椿は田畑作業中の雨宿り場所になったり、その幹に田を耕す牛を繋いだりと、人々の暮らしとともにあったのです。 人々は川淵や家の周りに椿を植え、生活の一部として取り入れていました。 花を楽しむだけでなく、堅い幹は高級な椿炭となり、種子の絞りカスは洗髪に使われました。 中でも椿油は様々な場面で活用されていたそうです。 日本髪を結い上げる髪油としての使用はもちろんのこと、食用や、灯り用、肌の油分補給、薄く伸ばしても固化しない性質を利用して、柘植の櫛や家具を油膜で保護したり、刃物や工具の錆止めに至るまで幅広く利用されていました。 こうした生活は昭和30年代に人々が離村するまで数百年も続きました。 その後、放棄された棚田に植林が進み、現在のような姿になってきたのです。 昭和30年代後半には伐採計画もあったそうですが、伐採を請け負った人がノコギリの刃を幹に近づけたところ、視界が赤く染まって気分が悪くなり、うずくまってしまったのだそうです。 それ以来、切ってはならない神聖な木であるとして、大切にされてきました。
椿とともに永く命を繋いできた人々。
時の流れを経て、今。
私もその椿とここに在るのだと思うと、それこそ奇跡なのではないか…。
そんな気持ちになりました。
加悦椿文化資料館には他にも椿にまつわる美術工芸品や、椿油を搾る体験コーナーなんかもありました。
印象的だったのは、館内いたるところに生けられた花々で、椿もたくさん生けられていました。
室内で花器に生けられている椿をじっと見ていると、外で見た時よりくっきりと、その生命から光が発せられているように感じられました。
資料館の方にお話を伺うと、ほぼ毎日生け替えているとのこと。
椿を愛するからこその心遣いに感心するばかりでした。
展示物を見ながらいただいたコーヒーも美味しかったです。
千年ツバキ公園に来られた際は、ぜひ立ち寄ってみて下さいね。
4月はこちらのツツジも見頃です。
雲岩公園のつつじ