桜の花はお好きですか?
私は子供の頃は桜にはあまり魅力を感じていませんでした。

可憐な小花よりも、どちらかというと木蓮の花の方が好みでした。

白木蓮の大ぶりの花は、遠くから見ると枝に白い鳥がいっぱいとまっているみたいに見えるでしょう。
それがおもしろくて、可愛らしくていいなと思っていたんです。

ですが、大人になった今は、春が近づいてくると桜の花が咲くのが待ち遠しくてワクワクします。
いつの間にか、桜に惹かれるうちの一人になっていました。

白木蓮

開花間近になると、待ちきれない人たちが桜の様子を見にきているのを度々見かけます。
お年寄りが子どものように橋の上から身を乗り出して、桜の枝を指差しながら、一緒に来た人と開花状況を確認しあっているのを見ると、みんな桜の花が好きなんだなあと心の中で密かに共感して微笑んでしまいます。

桜って、どうしてこんなにも人を惹きつけるんでしょうね。

ピンク色のつぼみがぷっくりと膨らんでいるのを見ると、中に生命の輝きがぎゅうぎゅうに詰まっているように感じます。
風船が弾けるように、開花と同時にそんなキラキラしたものが風に乗って、再びめぐってきた命のきらめきを、いろんな生き物たちと一緒に歌っているように思えるんです。


きっと人間も、そんな春のよろこびを共に感じたいんですね。


同じ生命という存在だから。


ちなみに、私は花が散った後、輝くような緑色の若葉が出てくるところも大好きなんです。
萌黄色っていうそうです。

夏の太陽が照りつける頃には、濃い緑の葉っぱが生い茂って、木陰を作ってくれるんですよね。

秋の紅葉や、冬に枝にいっぱい雪を乗せて立っている姿も好きです。

時々雪の重みで折れてしまった枝を見ることもあります。
それでも、絶対に咲くんですよね。絶対に。

何があっても必ず咲くんですよ。
すごいと思いませんか?

桜の可憐さ、強さ、儚さ、生命力。

人それぞれ色んな感じ方があるんだろうけれど、相反する性質をあわせ持ちながらありのままで生きる姿、命の途切れない営みに、人は生命の本質、神を感じるのではないでしょうか。


どんなところがあったっていい。

生きること。在ること。

それでいいんだ。


生命はただ在るというだけでこんなにも素晴らしいと思い出させてくれる。
桜はそんな花なのかもしれません。

木を植えた男