先日、出かけようとして玄関を出たところ、羽化したばかりのアゲハチョウに出会いました。
まだ羽を乾かしている最中で、そばにはさなぎの殻が。

驚きと感激のあまり心臓がドキドキして、呼吸が荒くなってしまいました。

チョウの羽化。

自然界ではありふれたことと思われるかもしれませんが、あの美しい姿を見ることができるのは、奇跡なのです。

羽化したばかりのアゲハチョウ

チョウの周りは、生まれた時から天敵だらけ

チョウは、たまごの時から天敵に狙われています。

たまごに寄生するハチ、幼虫に寄生するハエ、幼虫やさなぎに寄生するハチがいますし、鳥やアシナガバチ、クモ、アリなどにも狙われます。

せっかくさなぎになれたのに、いつの間にかさなぎに寄生するハチに体内に入りこまれてしまい、羽化できずに食べられてしまうこともしばしば。

あまりに厳しく、残酷に思えますが、自然界はこのような食物連鎖によって、バランスを保っているのです。
もしも、アゲハチョウだけが異常に増えすぎてしまったら、花の蜜も幼虫の食料であるミカン科の植物もたちまち不足し、アゲハチョウは絶滅してしまうことでしょう。

さなぎになったチョウは、一度ドロドロに溶けてしまう

褐色型のさなぎ。他に緑色型がある。

さなぎになったチョウは、さなぎの中で、ものすごい変容を遂げます。

なんと、一度ドロドロに溶けてしまうのです。
酵素の働きにより、幼虫時代の組織の大部分が壊され、一部の器官以外は、ドロドロの虫のスープのようになってしまいます。

溶けてしまった組織は、エクダイソンという変態ホルモンの働きによって、体の構造を劇的に変化させていきます。
幼虫の頃にはなかった、あし、触覚、羽などがつくられ、しだいにチョウの姿へと変化していきます。

小さなさなぎの中で、凄まじい破壊と創造が行われているのです。

氷点下でも凍らない強い耐寒性

無防備に見えるアゲハチョウのさなぎですが、寒さには極めて強く、厳しい冬を越すための能力が備わっています。
体液にグリセリンやトレハロースなどの凍結防止物質や塩分を含んでいるので、気温が0度を下まわっても凍らないのです。(−23℃くらいまでは大丈夫)

中でもキアゲハは耐寒性が高く、凍っても生き返ります。
−196℃の低温下で凍ったさなぎが、解凍後に羽化したという記録もあるそうです。

羽化率わずか0.6%

そんなアゲハチョウの羽化率は、わずか0.6%!

アゲハチョウのメスは、約100個のたまごをうみますが、そのうち1個も成虫にはなれないかもしれないということです。
1000個のたまごがあって、やっと6匹のアゲハチョウが無事に羽化できます。

私は、ゆずの木の剪定で落とされた枝葉にくっついていたアゲハチョウの幼虫を、何度か育てたことがありますが、ほとんどが他の昆虫に寄生されていました。

無事に羽化できるのは本当に稀なこと。
実際は0.6%よりもっと厳しいのではないかと思えるほどです。

アゲハチョウのお母さんが、あちこち場所をかえながらたまごをうむのは、そんな厳しさを知っているからなのかもしれません。


蝶が舞うという奇跡

アゲハチョウが舞う姿を見るということ。
それは、0.6%の奇跡だけではありません。

それを見ているあなたが生まれてきて、存在しているという奇跡と、
チョウが舞うタイミングに居合わせたという奇跡。
それらが重なり合うというのは、実はものすごい奇跡なのです。

春に見るアゲハチョウなどは、冬越しをしたさなぎから羽化したのですから、さらにすごい奇跡です。
そういうことを知ると、蝶が舞う姿に大きなよろこびがわいてきませんか?

今、地球は変容の時を迎えています。
どうなってしまうかわからない不安の中で、みんな生きています。

どうか、希望を失わないで下さい。
どんな破壊があろうとも、必ず新しい創造があります。

アゲハチョウが舞う姿を見たら、思い出して欲しいのです。
今、ここに在るという奇跡を。
試練の時を越え、大変容を遂げて、新しい世界へと飛翔することは可能なのだということを。

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