ずいぶん冷え込むなあと思っていたら、雪がちらつきはじめました。
厳しい冬の到来です。

ひざ掛けにくるまり、寒々しい庭を眺めていると、エアコンの室外機に何かがくっついているのが見えました。

「…ん?何だろう?蝶のさなぎかな?」

外は寒そうだけど、気になりだすと、確かめずにはいられません。
傘をさして見に行くことにしました。

近づいて見てみると…
それは、黄色と黒のしましまの…

「女王!!」
「何やってるの!?こんなところで!」


それは、ずぶ濡れで凍えている、アシナガバチの新女王蜂でした。

この時期、アシナガバチの女王蜂は越冬のため、風雨が当たらない軒下や朽木の中などに身をひそめているはずです。

アシナガバチの生態

「どうしてこんなところで…。」

昨日は晴れて暖かい日だったから出かけたものの、気温が下がって動けなくなってしまったのかもしれません。

「どうしよう…。」

傘をさしてやろうにも、支えがないのですぐに飛ばされてしまいます。

「困ったな…。」

ふと、テンちゃんの巣をそのままに残してあったペットボトルが目につきました。

女王蜂の行方不明 どうなる?!残された幼虫たち

「とりあえず、あの中に入ってもらおう。」

私はペットボトルをそっとあてがい、女王を割り箸につかまらせて保護したのです。

雪が舞う日の出会い

こんな寒空の下、黄色と黒のしま模様に、また出会えるとは思ってもみませんでした。

凍えた女王は動きが鈍く、私をじっと見つめた後、触覚についた水滴を前あしで拭っていました。
その動作が、何だか強がっているように見え、あの気高きカオリ女王のことが思い出されました。

アシナガバチ観察7月 女王蜂の不屈の精神


よく見ると、片方の触覚が切れてしまったのか、半分ありません。

「その触覚、どうしたの!?」

私は自然と話しかけてしまうのですが、もちろん彼女はこたえてはくれません。
相変わらず、毛づくろいするような仕草で体を手入れしています。

触覚を片方失っても、巣作りはちゃんとできるのだろうか…。

アシナガバチは、巣づくりの時、六角形の巣穴の一辺の長さを、自分の触覚をものさしにして決めるのだそうです。

毛づくろい?が終わると、鈍い動きで割り箸につかまり、また眠りはじめた女王。

私は凍える彼女のために、ペットボトルの中にわたを入れてあげました。
断熱材がわりに緩衝材を入れた植木鉢を用意し、ペットボトルごとすっぽりと覆えるようにしました。



「これでよし。」

暖かい室内では目覚めてしまうので、軒下に置くことに。
気に入ってくれるといいのだけれど…。
彼女がここを気に入ってくれれば、新女王の越冬の様子を見ることができそうです。


何となく、ちょっとどんくさそうな新女王。

「大丈夫かなあ…。」

この冬、初めての雪が降った日の出会いだったので、「ゆき」というニックネームをつけました。

眠れる、ゆき女王です。

カオリ女王の枝は

カオリ女王が去った後に残されたジンチョウゲの枝。
アリに襲われたカオリ女王の巣を守ろうと、私が巣ごと切り取った、あの枝です。

アシナガバチ観察8月 女王に敬意を

もしかしたら、根が生えて生きるかもしれないと思い、水に生けたままにして様子を見ていたのです。

これまでも何度かジンチョウゲの挿木を試みたことがあったのですが、根が生えたことは一度もなかったので、今回も無理かもしれないなあと、あまり期待はしていませんでした。

でも、できれば生きてほしかったので、思いつきで水に植物用のミネラル液を添加してみたのです。
すると、枝の切り口から根が生えてきました!
試してみてよかった!

これならいけるかも。
そう思って、植木鉢に植え替えて育てています。
弱々しいけれど、蕾もつきました。


厳しい冬を越える生命

ゆき女王の他に、今私のところには3匹のアゲハチョウのさなぎがいます。

本当は6匹いたのですが、3匹は寄生バエに寄生されていました。
なので、寄生バエのさなぎも3匹います。

みんな、越冬しようとしている生命です。

こんな厳しい寒さの中、何も食べずに死んだように眠っていても春になればまた目覚められるなんて、すごいと思いませんか?

蝶が舞うという奇跡

誰に教えてもらわなくても、そうするのです。
間違えて、真冬に羽化してしまうことはありません。


静まりかえる冬。
生命はじっと耐えて、春を待っています。